2008年11月 7日

この冬にお勧めの星空 planetarian~ちいさなほしのゆめ~

jpg寒い冬の日にお勧めの一冊です。
ついつい余計な事まで書きすぎて長文になっちゃいました。いつもならゴソっと消すんですが、今回は全部載せてみます。


以下はゲーム版planetarianの核心に触れるようなネタバレを含みます。
ゲーム版を未プレイの人は注意。

「planetarian~ちいさなほしのゆめ~小説版」(Amazon.co.jp)

レビューに移る前に。
もしゲーム版をプレイしてないなら、必ずプレイ後に小説版を読んで下さい。

それは単純に小説版だけではストーリーが分かりにくい。という事だけではなくて、
戸越まごめ氏の音楽、駒都えーじ氏の絵、そして涼元悠一氏の文章。
この三氏が織り成す小さな星空を一度体験しておくべきだと思うからです。

ストーリーは非常に分かりやすいです。
世界の設定自体は非常に練られたものなのですが、あえて詳しくは説明していません。
そんな世界において、デパートの中という非常に狭い世界で物語は展開していきます。
そして当面は壊れたイエナさんを修理する事だけに注力します。

しかしプレイした方なら分かると思います。
ゲーム中、ゆめみの解説と共にGentle Jenaが流れ始めるシーンは全くもって美しいという他に形容しようがありません。
理屈抜きで素晴らしいです。

今まで色々なゲームをプレイしてきましたが、このシーンほど形容し難く美しいシーンは他に無いです。
プラネタリウムを修理して、それをゆめみが上映する。
文章にすれば一行です。

でも…、
悲しいからでもなく、嬉しいからでもなく、これほど心を動かすのは何故でしょうか。

イエナさんを修理する過程に苦労したから?
そこにゆめみがいたから?
Gentle Jenaが素晴らしいから?
文章が上手いから?
いえ、これは文章だけでは、音楽だけでは、絵だけでは到底なし得ない事でしょう。
全てが揃い、融合してこそのplanetarianなのです。

僕は、このゲームのイメージがあってこその小説版だと思いますので、
その意味で、planetarian小説版を読む前にゲーム版をプレイする事を強くお勧めしたいのです。

前に戸越さんもブログで仰っていましたが、Gentle Jenaとゆめみ(すずきけいこさん)の解説付きのプラネタリウムが上映されるならどこへだっていきますよ。僕も連れてってください。

そしてゲーム版をプレイした後は小説版を。
気になる終わり方をしたその後も描かれていますし、更に最後は…。

要は全部読めって事です。
planetarianはゲーム単体でも(ひょっとしたら小説単体ですら)素晴らしい作品である事に間違い無いのですが、全てを読み終わる頃には更なる感動が待っているはずですから。

==========

ひょっとしたら、昨今のゲームをやり慣れた人はplanetarianを短いと言うかもしれません。
でもちょっと待って下さい。
20時間も30時間ものプレイ時間をかけ、その間に物語は複雑に展開し、伏線は至る所に張り巡らされ、そして意味ありげな終わり方をする。
そういったゲームも素晴らしいと思います。

しかし単純にわかりやすく感動できるストーリーがそれに劣っているとも思えません。
短いから駄目だなんて貶される理由にはならないはずです。
逆に短いからこそ、planetarianなのかもしれません。
これがもしAIR並みの長さの作品ならば、それはもはや別の作品でしょう。
プレイ時間は3,4時間かもしれませんが、価格だってダウンロード販売ならわずか1365円。
飲みに行けば一瞬で吹き飛ぶ程度のものです。
短いからこそ、空いた時間にでもサクっとプレイしてみてはいかがでしょうか。


……でも実は、Keyが好きでもplanetarianはやってないという方は多いんです。
あくまで僕の実感ですけど。

それもそのはずで、Kanon、AIR、CLANNAD、リトバスと言った系譜からは外れてますし、当初はパッケージ販売していませんでした。
あー、そんなのもあったね程度の認識の人も多くなるのもしょうがないかもしれません。

でも、もし「どうせ短編だし」とか「いつでもできるから」といった理由でプレイしていないのなら、今やるべきです。
ちょうど季節も良い頃合ですし、小説版も出た今。
1365円の価値はあると断言できます。

ついでにサントラの方もお勧めしておきます。
Gentle Jenaの~Extended Version~や、MELLさんが歌う「星めぐりの歌」も収録されています。
冬の寒い日は、サントラをかけながら眠ると良いと思いますよ。
ゆめみの解説があれば完璧なんだけどなあ…。


キネティックノベルのサイト。
planetarian ~ちいさなほしのゆめ~ ダウンロード販売

パッケージ版とサウンドトラック。
planetarian PC版   planetarian original soundtrack
planetarian PC版      planetarian original soundtrack



もうすでに疲れてきましたが、それでは小説版のレビューをば。

以下はplanetarianゲーム版・小説版の核心に触れるようなネタバレを含みます。
planetarianを未プレイ・planetarian小説版を未読の人は注意。

jpg
(左が通常版 右が限定版)

限定版と通常版はまったく同じ内容です。
限定版の方が装丁がちょっとだけ豪華なくらいですね。
あー、あと通常版の方には涼元さんの後書きが増えてました。


小説は以下の4つ主題による小作品集です。

・雪圏球(スノーグローブ)
・エルサレム
・星の人
・チルシスとアマント

この4章プラス、後述する幻のパートでplanetarianは一応完結します。
(チルシスとアマントが問題児ですが)

planetarianの世界はとても良く出来ています。
ゲーム版ではその世界観の説明は必要な分だけ書かれていましたが、小説ではほとんど説明はありません。
とは言っても、雪圏球、星の人は特に気になりません。
ただエルサレム、チルシスとアマントは解釈が難しいところです。

まあ、とりあえずそういう細かい話は置いておいて。
小説版を読むと、涼元さんの凄さが分かるかもしれません。
あの短いplanetarianというゲームを作るにあたって、これだけの設定、世界を頭の中で作っていたのなら驚くほかありません。

もちろん、小説は後から発売されたので付け足しで書いたのかもしれませんが、
それでもこの舞台を作るにあたり、色々練りこんできているのが分かります。

そうそう、推敲時にカットされたという幻のパートもあるので小説版を読み終わってからこのパートも読むとより良いと思います。

幻のパートはスズモトジェイピーのこの日記から。


雪圏球はゲームより以前のお話。まだゆめみが元気に働いていた頃です。
ゲームをプレイした時に思い描いた光景をそのまま小説にした感じですね。


エルサレムは星の人につながる設定が色々。
涼元さんはこういう話が好きっぽいですね笑
一番ページ数もさかれていますし、好き好きオーラが文面から伝わってくるよう。

ただ、エルサレムも少し微妙なところで、僕は読み進める上でマードック=屑屋だと思って読んでいたのですが…。
これ、本編では明示的に示されていないんですよね。
「90%そうだと思うけど微妙だなー」と思ってたらさきほどの幻のパートで「例の門」ってのが出てきてやっと繋がったんですよね。
という訳でエルサレムは屑屋の若い頃を描いた章です。


星の人は屑屋のその後。
星の人と、星の人に挿入されるはずだった幻のパートをもってplanetarianは一応完結します。

 「天国をふたつに、わけないでください」

ゆめみの願いが叶って、本当によかったと思います。
この幻のパート、本編に入れてもよかったと思うんですけど何が駄目だったのかなあ。
もう一度真面目に読み直さないとわからないかな。


チルシスとアマント
うーん、これは問題児ですね。
これを解決しないとplanetarianは終わらないんですが…。
というか、planetarianの小説版のレビュー書くなら恐らくこの章がメインになるんでしょうけど、例のごとく倒れそうなのでこれはのちほど。


planetarian小説版
planetarian小説版

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コメント

 こんばんは。KSLライブでplanetarianにまったく触れていなかったのがちょっと残念だったf2.8と申します。(東京と大阪会場両方行きました。両方とも日帰り、当日券入場、しかも大阪会場は自分の誕生日でした。関係ないですね。すいません)
 ものすごく遅いコメントですいません。どうしても気になった点がありますので書いておきます。
マードック=屑屋という解釈について。あくまで個人的な解釈ですがそれは違うのでは、と思います。マードックは「大戦前の時代を知る世代(妻子があったらしい)」で、屑屋は「大戦前の時代を知らない世代」だと解釈しています。屑屋について、planetarian本編のシナリオから「本物の花束を見たことが無い」「本物の星空をほとんど覚えていない」
「ゆめみより屑屋の方が年下」「ロボットに関する知識が乏しい(ほとんどロボットを見たことが無い?)」と読み取れますので、大戦の開始後に生まれた、あるいは物心ついたときには
大戦が始まっていたのだろうと思います。対してマードックは、「もう10年も前、息子にせがまれてレスターの宇宙博物館に行ったことがある(planetarian PE 初回版特典小説130ページより引用)。」とあります。これは大戦前の出来事と思われます。 もしマードック=屑屋だとしたら、本編の屑屋は少なくとも中年~初老ぐらいの人物になってしまいますが、もっと若い気がします。 幻のパートの「例の門」については本編終盤のゆめみの台詞を受けたものと思われます(「エルサレム」も意識して書かれているようですが)。あと、状況証拠的なものですが、屑屋とマードックはドラマCDで演じている声優も異なります。
 もう一つ、正解である可能性の薄い解釈ですが、planetarian本編のシナリオで触れている、「屑屋の相棒だった男」がマードックなのではないかと思っています。「サーディンの缶詰」あたりがそれっぽいかなと思います。

エルサレムは屑屋が以前に組んでいた相棒の若い頃の話らしいですよ。

エルサレムの主人公はやっぱり、「ロボットはこの世のもんじゃない」
って言って置き罠で死んだ老屑屋ではないかと思うのですが。

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